◆鳥取ループ裁判ってなに?


Ⅰ、「対鳥取ループ裁判」って何?

 

かねてから全国の被差別部落の所在地や関係者の個人情報などをインターネット上に掲載してきた鳥取ループ(示現舎)こと宮部龍彦氏らが、2016年に全国の部落の地名を掲載した書籍「全国部落調査・復刻版」を出版しようとしたことをきっかけに、部落解放同盟や個人が出版の差し止めやウェブ掲載の削除などを求めて起こした裁判です。

 

【1、これまでの経緯】

 

2005年11月   ブログ「鳥取ループ」が開設される。ブログ内で部落解放同盟や同和行政への批判を展開

2008年  3月   ブログ内で同和地区の所在地を知るための指南記事が公開される

2009年  9月   「鳥取県内の同和地区」サイトが開設される

2010年  3月   ブログやSNSで部落の地名が頻繁に公開され始める

2011年  8月   「示現舎」(出版社)ウェブサイトが開設される

2012年  6月   「住所でポン」(NTTの電話帳を再利用し、ネット上で検索できるようにしたもの)が開設される

2014年  5月   「同和地区Wiki」(部落の地名や部落解放同盟関係者の個人情報などを無断で掲載しているウェブサイト)

       が開設される

 

※この間、鳥取ループは行政を相手に同和地区の所在地の開示請求をしたり、情報公開の裁判を起こしたりしています。また、住所でポンについて提訴されたり、各地の法務局から部落の所在地記事の削除要請を出されたりしています。

 

2016年

2月  5日   Amazonにて「全国部落調査・復刻版」の予約が開始される

2月10日   Amazonが販売中止

2月15日   部落解放同盟中央本部が法務省へ申し入れ

2月15日   東京法務局人権擁護部が宮部氏を事情聴取

3月  8日   部落解放同盟の西島書記長が宮部氏と面談。宮部氏は発刊中止の要請を拒否

3月22日   部落解放同盟が横浜地裁へ出版禁止の仮処分を申立

3月28日   横浜地裁が出版禁止の仮処分決定

3月29日   東京法務局長が宮部氏に人権侵犯事件として説示

4月  4日   横浜地裁相模原支部にウェブサイト掲載禁止の仮処分を申立

4月  7日   横浜地裁が示現社に出版禁止の強制執行 

4月  8日   相模原支部が宮部氏のマンションの仮差押決定

4月18日   相模原支部がウェブサイト掲載禁止の仮処分決定

     (サイトは削除されたが、ミラーサイト、コピーサイトは現在も存在)

4月19日   部落解放同盟と個人が東京地裁に提訴

7月  5日      第1回口頭弁論 (現在、第8回口頭弁論まで終了)

 

 

【2、仮処分と仮差押】

 

仮処分  通常の裁判の終了を待っていては著しい損害などがある場合、裁判所が迅速に仮の判断(決定とい

     う)を出す制度

仮差押  通常の裁判中に財産を処分してしまうことを防止するために、裁判所の判断により相手方の財産を

     仮に差し押さえる制度

 

 2016年2月に鳥取ループが全国部落調査・復刻版の出版予約を通販サイトAmazonで始めました。実際の販売開始は4月からと予告されていたため、出版を止めるために通常の裁判を起こしたとしても、判決が出るまでの間に出版されてしまうことが予想されることから、仮処分の手続きが取られました。

 

 2016年3月28日に横浜地裁から出版禁止の仮処分命令が、同4月18日に横浜地裁相模原支部からWEBサイト掲載禁止の仮処分決定が出されました。被告側はこれを不服とし高裁、最高裁でも争いましたが、出版禁止は2017年11月10日に、WEBサイト掲載禁止は2018年1月22日にそれぞれ最高裁で被告の訴えを棄却する決定が出され仮処分の審理は終了。出版禁止、WEBサイト掲載禁止の仮処分は本訴(いわゆる通常の裁判)の判決が出るまでは維持されることが決定しています(詳しい経過はこちらをご覧ください)。

 

 また、仮差押は2017年12月28日の保全抗告決定から規定の期間内に特別抗告や許可抗告の申立がなかったため審理は終了し、こちらの決定も本訴の判決が出るまでは維持されます。

 

 仮処分や仮差押えで出ている決定はあくまでも「仮」のものなので、「本訴」で争う必要があります。現在はその本訴が行われている最中です。

 

(文責:上川多実)