Q.部落差別って名誉毀損とか現行法で対処できるんじゃないの?


A.

 2016年12月に「部落差別の解消の推進に関する法律」(以下、部落差別解消推進法)が成立しました。部落差別解消推進法は、日本の憲政史上はじめて「部落差別」という用語が使われた法律で、国が現在においても部落差別が存在していることを認め、部落差別は許されないものであるとの認識が示されました。

 これは本当に大きな一歩ですが、部落差別解消推進法はあくまでも理念法であり、部落差別・人権侵害を受けた人を救済する制度や、差別実行者への罰則規定は入っていません。どれだけ悪質な差別であっても、現行法では「名誉毀損」でしか告訴することができません。
 2015年4月から5月にかけて、大阪・京都・兵庫などで部落や皮革業者を侮蔑する極めて悪質な内容の差別ビラが1800枚以上ばら撒かれましたが、大阪簡易裁判所は「侮辱罪」で科料9,900円の略式命令を下しただけでした(※1)。現在の日本では「差別」そのものは罪にならないのです。泣き寝入りするに等しいのです。
 1965年に同和問題の「早急な解決こそ国の責務であり、国民的課題である」と謳った「同和対策審議会答申」が出されました。答申では部落問題を解決するために差別禁止法と人権侵害救済法、特別措置法の三つの法律が必要であると提案されていました(※2)。これら提案された三つの法律のうち特別措置法のみが、1969年に「同和対策事業特別措置法」として実現しただけです。
 やはり部落問題の解決のためには差別禁止法や人権侵害救済法が必要です。

 

てんたろん

 

(※1)事件の詳細は『2016年度版 全国のあいつぐ差別事件』(解放出版社, 2016)p.98-100を参照。

(※2)奥田均『「同対審」答申を読む』(解放出版社, 2015)