Q.同和地区の人って、免許タダとか、税金払ってないとか、優遇されてるんでしょう?


 1969年に制定された同和対策特別事業特別措置法は、1965年の同和対策審議会答申で指摘された「実態的差別」と「心理的差別」の悪循環を断ち切るために、特に「実態的差別」の克服、すなわち、部落に見られる劣悪な住環境をはじめ、就職・教育の機会均等が差別によって実質的に保障されていないため、生活が不安定であり、経済的水準、教育文化水準が極めて低いといった、部落と部落外の不平等・格差を是正する事業を実施することを目的としていました。

 

 こうした不平等・格差を克服するために、住環境整備をはじめ、失業対策、就職支援、産業振興や学歴の向上など、部落住民の生活の安定、福祉・経済力の向上等が求められました。

 

 そこで同和対策の一環として、高校・大学進学者への奨学金、市町村民税や固定資産税の減免、公営住宅の家賃や保育料などの軽減措置、住宅新築・改修資金の貸付事業、産業に対する融資事業などが実施されました。ただし、その多くが地方自治体の独自事業として行われていることから、これらの実施状況は地域によって大きく異なります。また、歴史的に被差別部落であったとしても、行政によって同和地区として指定されず、事業がまったく実施されていない部落も多数あります。

 

 なお、こうした特別対策事業は、事業が進捗するに従って徐々に縮小され、特に、2002年に一連の同和対策に関する特別措置法が期限切れを迎えたあとは、ほとんどの地域で廃止されることになりました。

 

 ちなみに、自動車運転免許は職業の安定を図るために重要な資格となります。そこで、資格取得のために必要な経費を補助する、自動車運転訓練事業などが実施されてきましたが、国の事業としては1987年に廃止されています。

 

 こうした特別対策事業の意義について、特定の人々への優遇とみるか、不平等・格差是正のために必要だと考えるかは議論がわかれるところですが、少なくとも1960年代においてはこうした事業を実施しなければならないほどに差別・不平等・格差の実態が見られた、ということは間違いないでしょう。

(つばめ三郎)