Q.ネットで見かける全国部落調査とは何ですか? 部落の所在地を明かすことは差別につながるんですか?


A.

 『全國部落調査』は、1936(昭和11)年に、中央融和事業協会(1925年に内務省社会局に設立。政府の外郭団体)が、融和事業を進めるための資料として作成した調査報告書です。もちろん一般公開を目的としない内部文書です。

1975年に企業や大学等が身元調査に使っていたことが発覚した『部落地名総鑑』の情報源となった文書といわれ、そこには全国5,367の被差別部落の地名、戸数、人口、職業、生活程度が記載されています。

 

 ところが、かつて差別事件の震源となったこの報告書を、示現舎合同会社(代表・宮部龍彦)が復刻・出版するよう計画し、その内容をインターネット上で公開するとともに、2016年2月、amazonで復刻版の予約販売を開始しました。

 

これを出版したりインターネット上で公開することは、差別を助長・誘発するとして、部落解放同盟は出版・販売の差し止め、インターネット上のデータ削除を求める仮処分の申し立てを行い、裁判所もこれを認める決定を出しました。しかし、『復刻・全国部落調査』の出版が差し止められると、示現舎は、同じデータを載せた書籍に異なるタイトルをつけネット上で販売したり、ネット上の情報を削除対象とは別のサイトに移すなどしました。この出版社とその代表・取締役に対して、現在、部落解放同盟と200人を越える個人が出版禁止・掲載禁止・損害賠償を求める裁判を起こしています。

 

 部落への差別感情がまだ社会に現存する中で、部落の地名やそこに住んでいる人々の情報を暴くことは、結婚や就職、転居等における身元調査・土地調査などの誘因となる、差別誘発行為です。削除命令を受けた「同和地区wiki」の説明書きでは、利用の目的は一切問わないとされており、差別に使われることを事実上妨げていません。

 

(つばめおばさん)